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長崎地方裁判所 昭和50年(わ)539号 決定

少年 S・T(昭三三・一・六生)

N・T(昭三二・一・一九生)

U・Y(昭三一・一一・九生)

主文

本件を長崎家庭裁判所に移送する。

理由

本件公訴事実は、

第一  被告人S・Tは、昭和五〇年五月五日午後三時三〇分ころ、長崎県西彼杵郡○○○町○○○○○××××番地の×、○頭○俊方で○末○幸(当時一六歳)、○崎○○子(当時一六歳)らと雑談中、劣情を催し、右○末を強姦しようと決意し、A(当時一八歳)と共謀のうえ、同女に対し、「話がある。」と申し向けて同女を同○○○××××番地の×、○○○町○○○○公園雑木林内草地に連れ込み、同日午後四時ころ、同所において、同被告人が「よかやろう。」と申し向けいきなり同女を抑向けに倒してその上に乗りかかり、右Aと二人がかりで同女の身体を押えつけ無理矢理に同女のパンティを脱ぎとるなどの暴行を加え、その反抗を抑圧し、A、同被告人の順に強いて同女を姦淫した

第二  被告人三名は、

一  同年七月二〇日午後四時三〇分ころ、前同町○○○○○○○○所在○○○の滝付近において、○田○一(当時一八歳)と一緒にいたビキニ姿の○本○代○(当時一八歳)をみて劣情を催し、同女を強姦しようと決意し、B(当時二〇歳)、C(当時一九歳)と共謀のうえ、右Bにおいて、右○田に対し「話がある。」と申し向けて○田を同女から引き離して同所東方約二五メートルの地点に連れ込み、被告人S・T、同N・Tと交替して○田を監視し、被告人U・Yが同女を同所東南方約一五メートルの岩の上に連れ込み、同所において、同女に対し、「させろ、横になれ。」と申し向け、いきなり同女を抱きかかえ抑向けにして押えつけ、同女のビキニパンツを無理失理に膝付近までひきづりおろし、被告人S・Tにおいて、悲鳴をあげて抵抗する同女の頭部をかかえ口をふさぐなどして暴行を加え、その反抗を抑圧し強いて同女を姦淫しようとしたが、かけつけた同女の連れの○川○からとめられたため、その目的を遂げなかつた

二  同月二九日午前三時ころ、同町○○○○○××××番地××、○○モータース付近道路を歩行中の○田○子(当時一六歳)、○牧○子(当時一七歳)、○島○う○(当時一六歳)の三名を認めるや劣情を催し、右○田を強姦しようと決意し、前記B及びD(当時二三歳)、E(当時一九歳)、F(当時一五歳)と共謀のうえ、同女らの知人○中○出○に命じて同女らを右○中運転の軽四輪乗用自動車に乗車させて同○○○×××番地○○○○神社付近草原まで運行させ、同所で同女らを下車させ、右Bが右○牧を、右Fが右○島をそれぞれ○田からひきはなしたうえ、右Dが○田を同所東北東三七メートルの農道に連れ込み、同日午前三時三〇分ころ、同所において、右○田を押し倒しその上に乗りかかつて押えつけ、抵抗する同女に対し、「させんとくらわすぞ。」などと申し向けて暴行・脅迫を加え、その反抗を抑圧し、D、被告人S・T、同U・Y、同N・Tの順に強いて同女を姦淫した

ものである。

というにあるが、右事実は当公判廷において取調べた証拠により明らかであり、法律に照すと、前記第一及び第二の二の所為はいずれも刑法六〇条、一七七条前段に、同第二の一の所為は同法六〇条、一七九条、一七七条前段にそれぞれ該当する。

そこで、被告人らの処遇について検討すると、本件はいずれも数名共同して年少の被害者を強姦し、又はしようとした犯行であり、しかも被告人三名とも繰り返し行つているもので、その犯情は決して軽くはなく、この種犯罪の多発する今日においては、一般予防の見地からすれば軽視しえない事案ではあるが、被告人らは、いずれも現在一七歳から一九歳に達したばかりの少年であり、本件各犯行も少年に特有の精神的動揺期における情緒不安定に、最近の性風俗の影響と集団心理が加わつて、事の重大性に気づかずなされたものであり、被告人らの反規範的態度は未だ固定化するには至つておらず、なお可塑性に富むと思われること、被告人S・T、同N・Tにはこれまで保護処分歴が全くなく、被告人U・Yも毒物および劇物取締法違反(ボンド吸入)による不処分以外には保護処分歴がないこと、被告人らは定職を有し、それぞれの家庭も比較的堅実で、今後親族による保護監督も期待できること、被告人らが当公判廷において事案の重大性に気付き、二度とこのような犯行を繰返さないことを誓約していることのほか、被害者らには相当の慰謝がなされ、現在では被告人らの処罰を積極的に望んではいないこと、前示第二の事実の共犯者たる成人のD、Bが刑事裁判において、いずれも刑の執行を猶予されていることなどの諸般の情状を考慮すると、被告人らの健全な育成のためには、被告人らを刑事処分に処するまでもなく、家庭裁判所の保護処分に処することによつて十分にその目的を達成できるものと考えるので、少年法五五条により、本件を長崎家庭裁判所に移送する。

よつて主文のとおり決定する。

(裁判長裁判官 萩尾孝至 裁判官 青木誠二 仲戸川隆人)

編注 受移送決定(長崎家 昭五〇少一五一七号・一五一八号・一五一九号 昭五一・一・一六決定 少年三名とも保護観察決定)

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